相続税・贈与税の基礎:控除・税率・特例と2024年からの改正

公開日:2026-06-14カテゴリ:相続・贈与

著者:nodu-ikunas(2級FP技能士)|本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の投資・税務助言ではありません。

相続税は「遺産総額にそのまま税率をかける」税金ではありません。基礎控除を引き、いったん法定相続分で分けたものとして総額を計算し、実際の取得割合で配分します。さらに配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例で大きく変わります。贈与税にも暦年課税と相続時精算課税の2つがあり、2024年からはルールが変わりました。この記事で、相続税・贈与税の全体像と最近の改正点を一度に整理します。なお相続・贈与は例外と改正が多い分野です。本記事は参考情報であり、具体的な判断は税理士など専門家にご相談ください。

相続税は「遺産総額 × 税率」ではない

相続税は、ざっくり次の順番で計算します。いきなり遺産全体に税率をかけるわけではない点が大事です。

  • ① 各人ごとに課税価格を計算:相続・遺贈財産、みなし相続財産(保険金など)、相続時精算課税の適用財産から、非課税財産・債務・葬式費用・一定の生前贈与を反映して各人の課税価格を出し、それを合計して正味の遺産額(課税価格の合計額)とする。
  • ② 基礎控除を引く3,000万円+600万円×法定相続人の数。これ以下なら原則として相続税はかかりません。
  • ③ 法定相続分で分けたと仮定して各人の税額を速算表で計算し、合計して「相続税の総額」を出す。
  • ④ 実際の取得割合で按分し、各人の負担額を決める。そのうえで配偶者の税額軽減や2割加算などを反映する。

たとえば法定相続人が「配偶者+子2人」の3人なら、基礎控除は 3,000万円+600万円×3=4,800万円です。正味の遺産額がこれ以下なら相続税はかかりません。

法定相続分と速算表

③で使う「法定相続分」は、実際の遺産分割そのものではなく、税額計算上の仮の分け方です。代表的な割合は次のとおりです。

  • 配偶者と子:配偶者 1/2、子 全体で 1/2(子が複数なら等分)
  • 配偶者と直系尊属(親など):配偶者 2/3、尊属 1/3
  • 配偶者と兄弟姉妹:配偶者 3/4、兄弟姉妹 1/4

この仮の取得金額に、次の速算表(10%〜55%の累進)を当てはめて各人の税額を出し、合計します。

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

税額を大きく変える「特例・非課税枠」

相続税には、納める額を大きく減らす制度がいくつもあります。代表的なものを押さえておきましょう。

制度内容
配偶者の税額軽減配偶者が実際に取得した正味の遺産額が、1億6,000万円または法定相続分相当額いずれか大きい方までなら、配偶者に相続税はかからない。
小規模宅地等の特例(居住用)一定要件を満たす自宅の土地は 330㎡まで評価額を80%減額。事業用は400㎡まで80%、貸付用は200㎡まで50%。
※同居・別居、取得者、申告期限までの保有・居住の継続、老人ホーム入所などで適用可否が変わります。自宅の土地なら常に使えるわけではありません。
生命保険金の非課税枠相続人が受け取る死亡保険金は 500万円×法定相続人の数 まで非課税。
死亡退職金の非課税枠死亡退職金も 500万円×法定相続人の数 まで非課税(保険金とは別枠)。

注意したいのは、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って納付額が0円になる場合でも、相続税の申告書の提出が必要なことです。基礎控除以下で税額が出ない場合は通常申告不要ですが、これらの特例で税額をゼロにするケースは別で、「税金がかからない」ことと「申告が要らない」ことは同じではありません。また配偶者の税額軽減は、申告期限までに遺産が分割されていないと原則として使えません(期限後3年以内の分割見込書などで救済される場合があります)。

一方、被相続人の一親等の血族(子・父母など)および配偶者以外の人が財産を取得すると、相続税額に20%が加算されます(2割加算)。兄弟姉妹、甥・姪、孫養子(代襲相続人を除く)などが対象です。

贈与税には2つの方式がある

贈与税は、暦年課税相続時精算課税のどちらかで計算します。性格がかなり違います。

暦年課税:毎年110万円の基礎控除

1年間(1月1日〜12月31日)に受けた贈与の合計から基礎控除110万円を引き、残額に税率をかけます。直系尊属(父母・祖父母)から18歳以上の子・孫への贈与は、税率が低めの特例税率を使えます。それ以外(夫婦間・兄弟間・他人からなど)は一般税率です。

特例税率(直系尊属→18歳以上の子・孫)

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

一般税率(上記以外。夫婦間・兄弟間・他人からなど)

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%
300万円以下15%10万円
400万円以下20%25万円
600万円以下30%65万円
1,000万円以下40%125万円
1,500万円以下45%175万円
3,000万円以下50%250万円
3,000万円超55%400万円

※ 1年間に特例贈与財産と一般贈与財産の両方を受けた場合は、それぞれの税率で計算したうえで按分するため、片方の表だけでは正確に求められません。

相続時精算課税:累計2,500万円まで贈与税ゼロ

一定の親子・祖父母孫間などで選べる制度で、特定の贈与者ごとに累計2,500万円の特別控除があり、これを超えた部分に一律20%が課税されます。2024年1月1日以後の贈与からは、これとは別に毎年110万円の基礎控除が新設されました。

ただし相続時には、精算課税で贈与した財産が原則として贈与時の価額で相続財産に加算されます(2024年以後の贈与は年110万円の基礎控除後の残額を加算)。そして、いったん相続時精算課税を選ぶと、その贈与者からの贈与について暦年課税には戻れません

2024年からの改正:生前贈与加算が3年→7年に

暦年課税で贈与した財産は、贈与した人が亡くなったとき、相続開始前の一定期間内のものが相続財産に加算されます(生前贈与加算)。この期間が、2024年1月1日以後の贈与から、従来の「3年以内」から「7年以内」へ段階的に延長されました。延長された4年間(相続開始前3年超〜7年以内)の贈与については、合計100万円までは加算対象外です。

移行はゆるやかで、相続開始日が2026年12月31日以前なら加算対象は従来どおり「3年以内」です。そこから少しずつ7年へ近づいていきます。

相続開始日加算対象期間のイメージ
2026年12月31日以前相続開始前3年以内
2027年以後2024年1月1日以後の贈与から段階的に延長
最終的な姿相続開始前7年以内(うち3年超〜7年以内の部分は合計100万円まで加算対象外)

具体的な加算期間は相続開始日と贈与日の組み合わせで変わるため、実際の判定では日付の確認が欠かせません。

本記事は相続税・贈与税の全体像を概説したものです。小規模宅地等の特例(同居・別居・家なき子・老人ホーム入所などで結論が変わる)、養子の数の制限、相次相続控除、各種の資金贈与の非課税措置などは省略・簡略化しています。相続・贈与は例外と改正が多く、適用には細かな要件があります。本記事は一般的な情報提供であり、税務助言ではありません。具体的な判断は税務署・税理士にご確認ください(免責事項)。

参考・出典(公式情報)

出典の最終確認日:2026-06-14。制度・税制は改正される場合があります。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

この記事を読んだあとに確認したいこと

  • 相続税・贈与税シミュレーターで基礎控除と概算税額を確認する
  • 暦年課税と相続時精算課税のどちらが合うかを整理する
  • 具体的な相続対策は早めに税理士など専門家に相談する