前提の考え方(利回り・インフレ・標準偏差)
運用に関する前提は、結果を大きく左右します。同じ家計でも利回りを1%変えるだけで、数十年後の資産は大きく変わります。ここでは本ツールがどう前提を扱い、どんな点に注意すべきかを説明します。
すべて実質値で扱う
本ツールは金額・利回り・標準偏差をすべて実質値(物価上昇を除いた、いまの購買力ベース)で扱います。そのため、入力でインフレを別途織り込む必要はありません。表示される将来の金額は「いまの価値に換算した金額」なので、「30年後の3,000万円」が現在の3,000万円と同じ感覚で読めます。
名目値(見かけの金額)で考えると、インフレで将来の金額が大きく見え、実際の購買力を過大評価しがちです。実質で統一することで、こうした錯覚を避けられます。実質値の意味は用語集でも解説しています。
期待リターン(平均)
将来の平均的なリターンの前提です。過去の市場が将来も続く保証はないため、楽観しすぎないことが何より大切です。とくに注意したいのが、ここで入力するのは実質リターンだという点です。たとえば名目で年5%期待でも、インフレが年2%なら実質では約3%になります。実質リターンは名目より小さくなることを踏まえて控えめに置きましょう。
現金・預金は名目では減りませんが、インフレ下では実質的に目減りします。本ツールでは個人向け国債のような商品を「実質リターンほぼ0」として表現することもできます。資産ごとに無理のない前提を置き、複数の値で試して悲観側でも家計が成り立つかを確認すると、安全側の検討になります。
標準偏差(変動の大きさ)
リターンのぶれ幅を表す指標です。標準偏差が大きいほど、毎年の結果が平均から離れやすく、最終結果の帯(P25〜P75)も広がります。株式中心のポートフォリオは期待リターンが高い反面、標準偏差も大きく、結果の幅が広くなります。一方で現金比率を高めると幅は狭まりますが、期待リターンは下がります。リターンとリスク(変動)はセットで考えるのが基本です。
とくに取り崩し期は、資産が減っている局面で大きな下落が重なると回復が難しくなります(収益率配列リスク)。標準偏差を非現実的に小さく置くと、このリスクを過小評価してしまう点に注意してください。
インフレ
本ツールでは実質値で統一しているため、インフレは内部で調整済みです。利用者が物価上昇率を別途入力する必要はありません。年金や生活費も実質ベースで入力・表示されます。
前提は「当てる」より「幅で見る」
将来の利回りやインフレを正確に当てることは誰にもできません。大切なのは、ひとつの前提に賭けるのではなく、強気・中立・弱気の複数パターンで試し、どの結果でも極端に破綻しない計画かどうかを確認することです。前提を少し変えると結果がどう動くかを見ること自体が、リスクの理解につながります。